第426章:元凶

外は寒かったので、黒川浩二は坂本加奈を寒い目に遭わせたくなかったため、執事に客間へ案内するよう頼んだ。

自分も坂本加奈と一緒に客間へ向かい、一体誰が来たのか確認しようとした。

黒いダウンジャケットを着て、落ち着かない様子の林翔平を見た時、坂本加奈は呆然とした。

林翔平は彼女の方を向くと、ぎこちなく失礼な笑みを浮かべた。「加奈、久しぶり」

「久しぶり」坂本加奈はすぐに我に返り、さっぱりとした態度で挨拶した。「どうぞ座ってください」

時は流れ、内村里美にしても林波留にしても、相応の報いを受けた。林翔平は彼女にとって最も馴染みのある他人となっていた。

林翔平は数千万円もする本革のソファを見て、手を振った。「いや、座らないでおくよ。君が子供を産んだと聞いて、ちょうど用事で戻ってきたところだったから、お祝いに来ただけだ」

林・坂本両家は付き合いがなくなったとはいえ、以前からの繋がりは残っており、坂本家の噂を耳にするのは不思議なことではなかった。

坂本加奈が「ありがとう」と言うと、その場の空気は一気に死んだような静けさと気まずさに包まれた。

林翔平は落ち着かない様子でズボンを撫で、ポケットから二つの祝儀袋を取り出して彼女に差し出した。

「おめでとう。これは私からのささやかな気持ちです。お子さんたちへ」

坂本加奈が躊躇して受け取らないでいると、黒川浩二が手を伸ばして受け取り、薄い唇を開いて「ありがとう」と言った。

それを見て、坂本加奈も「ありがとうございます」と言った。

林翔平は気まずい雰囲気を感じ取り、必死に自然を装って「じゃ、お邪魔しませんので、失礼します」

坂本加奈は頷いて「さようなら」と言った。

最後に、執事に林さんを送るよう頼んだ。

林翔平は足を引きずりながら玄関へ向かい、坂本加奈の傍を通り過ぎる時、心に限りない虚しさと感慨が込み上げてきた。

もしあの時の結婚式で彼女を置いて白川晴香を追いかけていなければ、今頃は二人で一緒に、二人の子供を抱いてお祝いの言葉を受けていたはずだった。

一度の過ちが全てを狂わせ、今更後悔しても何も変わらない。

林翔平はそんな混乱した思いを押し殺し、出ようとした時、突然背後から男の不機嫌な冷たい声が聞こえた——

「おい、お前ら何グズグズしてんだよ?結局酒飲むのか飲まないのか!」