甘い気持ちは一瞬で消え去り、まずは人間の子供の世話をしなければと思った。
二人で子供たちと過ごす日々は、苦あり楽ありながらも充実していた。子供たちが日に日に成長し、愛らしく柔らかな姿を見ていると、すべての苦労が報われる気がした。
半年後、二人の子供たちはまだ歩けなかったが、カーペットの上で自由に転がれるようになっていた。
黒川浩二は家中の床にカーペットを敷き詰め、子供たちが自由に這い回れるようにした。坂本加奈もようやく絵筆を持つ時間ができた。
この半年で彼女も一人前の母親に成長し、ミルクを上手に作れるようになったが、おむつ替えの時はまだ吐き気を催してしまう。
黒川浩二は彼女がそれに慣れないことを理解し、無理強いはしなかった。どうせミルクを上手に作れるのだから、それで十分だった。
臨は黒川浩二に似て、控えめで目立たない性格で、おむつをつけたままカーペットの上でじっとしていられた。
一方、伽月は活発な性格で、じっとしていられず、床に置かれるたびに黒川浩二のズボンの裾を引っ張るか、絵を描いている坂本加奈に近づこうとした。
坂本加奈はそのたびに筆を置き、彼女を抱きしめて、柔らかな頬を摘みながら優しく尋ねた。「伽月はまたママが恋しくなったの?」
伽月は顔を上げて、くすくすと笑った。
そんな時、黒川浩二が近づいてきて娘を抱き取るのだった。
「絵を描いた手を洗っていないから、汚いよ」
坂本加奈は口を尖らせた。「最近は私のことなんて気にかけてくれないくせに」
黒川浩二は片手で伽月を抱きながら、彼女の耳元に顔を寄せてキスをし、囁いた。「今夜、どれだけ気にかけているか教えてあげる」
子供が生まれて半年が経っても、黒川浩二は禁欲を続けていた。しかし先日、医師との診察の際、坂本加奈が気付かないうちに医師に確認を取っていた。
医師は坂本加奈の体は完全に回復しており、夫婦生活に問題はないと言った。
坂本加奈は頬を赤らめ、唇を噛んで黙っていた。
その夜、黒川浩二は早めに二人の子供たちを寝かしつけた。主に伽月の方で、臨は大人しく、寝かしつける必要もなかった。
黒川浩二が部屋に戻ると、坂本加奈はすでに風呂を済ませ、スマートフォンで佐藤薫と深木雫とチャットをしていた。
彼が入ってくるのを横目で見て、尋ねた。「伽月と臨は寝た?」