内田須美子は背筋が凍り、振り向くと後ろに立っている坂本真理子を見て、気まずそうにも礼儀正しく微笑んで「坂本副社長」と言った。
職場では会社は違えど、相手の職位が自分より上なので、佐藤薫も丁寧に「坂本副社長」と呼びかけた。
坂本真理子は聞こえなかったかのように、目を内田須美子に向けて言った。「そんなに人の縁結びが好きなら、結婚相談所に就職すればいいのに。黒川氏にいるのはもったいないわね」
内田須美子はバカでもその言葉の皮肉を感じ取り、助けを求めるような目で佐藤薫を見た。
佐藤薫は無力さを感じながら肩をすくめた。自分に何ができるというのか?
「仕事に戻ります」内田須美子は逃げるように立ち去り、難題を佐藤薫に残した。
坂本真理子は鋭い目つきで佐藤薫を見て、「そんなに恋愛が好きなの?一日恋愛しないと死んじゃうの?」