薄田正と中谷仁の他に、西村雄一郎も来ていて、田舎にいた坂本加奈と黒川浩二も来ていた。
全員の視線が自然と佐藤薫と坂本真理子に集中した。
佐藤薫は彼らの視線に少し落ち着かない様子で、手を引っ込めようとしたが、坂本真理子はしっかりと握ったまま、みんなの前で宣言した——
「今日は皆さんに一つお知らせがあります。私、坂本真理子と佐藤薫は正式に付き合うことになりました!」
最後に付け加えて、「さあ、拍手してください」
佐藤薫は額に手を当てて:「……」
他の人たち:「……」
坂本加奈だけが満面の笑みで拍手を送り、「お兄ちゃんと蘭ちゃん、おめでとう!」
坂本真理子は坂本加奈に「やっぱり分かってるね」という目線を送り、さらに訂正した:「蘭ちゃんじゃなくて、お姉さんって呼びなさい」
佐藤薫は彼の腕をつねって、なんてお調子者なんだろうと思った。
「加奈ちゃん、彼の言うことは気にしないで!蘭って呼んでくれて大丈夫よ」
加奈ちゃんに「お姉さん」と呼ばれることを想像すると、鳥肌が立ちそうだった。
坂本加奈も「お姉さん」と呼ぶのは違和感があり、やはり蘭と呼ぶ方が自然だと感じた。
佐藤薫と坂本真理子が近づいて来て、彼女が坂本加奈の隣に座ろうとした時、坂本真理子に引き戻された。
「どこに座るつもり!」坂本真理子は眉を上げて、「彼氏の隣に座りなさい」
そう言いながら、挑発的な目で中谷仁を見た。まだ中谷仁に彼女を奪われそうになったことを根に持っているようだった。
佐藤薫:「……」
この人は、もう手遅れだ。
薄田正は大らかに、グラスを上げて祝福した。「おめでとう」
坂本真理子は形式的に「ありがとう、ありがとう」と返した。
佐藤薫は坂本加奈に諦めた表情を向け、肩をすくめて、さらに中谷仁の方を見て、社長に我慢してもらうようアピールした。
中谷仁は気にする様子もなく、グラスを持って小さく飲んでいた。一方、西村雄一郎は凛々しい眉を寄せていた。
坂本真理子がわざわざ自分を呼び出して見せつけるような真似をすることに非常に不満そうだった。
幸い坂本加奈がいて、今回帰って来た時に何枚もの絵を持って来て、西村雄一郎にギャラリーに飾らせることにした。しばらくは忙しくなりそうだった。