「詩織、私はこの心臓を取り出してあなたに見せたいほどなんだ」
血まみれの手で棚を支え、かろうじて立っている彼の顔は紙のように青ざめ、声は次第に弱々しくなっていった。
「生きるために、今まで多くのことをしてきた。でも、どんなに頑張っても運命から逃れられないようだった。多くの人が生まれた時から持っているものを、私は持っていなかった。詩織...私にはなかった。だから争うしかなかった。奪うしかなかったんだ」
血走った目には涙が浮かび、唇には悲しげな笑みを浮かべながら、「私は良い人間じゃない。この心は真っ黒だ。でも、もしこの心に少しでも純白な部分があるとすれば、それはあなたなんだ」
私は命の中で唯一の純白を、あなたを愛することに使った。
たとえそれが生きる意志に反していても。
黒川詩織は全身が硬直し、手にはハサミを握ったまま、虚ろな目で彼を見つめ、一言も発することができなかった。
「詩織、私もずっと、あの5パーセントの株式のためにあなたに触れないでいたと思っていた。でも、この一年で本当の理由が分かった...株式だけじゃない、あなたのためだったんだ」
「あなたはとても純真で優しく、純粋な愛を持って、熱い心を全て私にくれた。でも、私には受け取る勇気がなかった...あなたの愛が純粋であればあるほど、私はあなたに触れる勇気がなくなった。あなたが私を愛すれば愛するほど、私には何も与えられないと思った。結局、私という人間は心まで黒いのだから」
言い終わると、自嘲的に笑みを浮かべた。傷口からは血が流れ続け、瞳の光が次第に霞んでいった。
血に染まった手を震わせながら彼女に伸ばし、「詩織、私はもう...あなたのいない時間を生きたくないんだ」
彼女のいない時間は、全てが凍りついたようだった。心臓まで凍りついて、まるで生ける屍のように生きていた。
彼は確かに彼女を愛していた。それなのに、彼女を深く傷つけてしまった。
黒川詩織はまだ何も言わず、彼が差し出した手にも全く反応を示さなかった。
森口花の長身が突然床に倒れ込み、真っ赤な血がカーペットを完全に染め上げた。
空気中には濃厚な血の匂いが漂っていた。
「ピンポーン」とエレベーターの扉が開き、田中静佳が急いで歩いてきた。
向かいのドアも開いた。
「森口社長...」
「お嬢様!」