ジェスリンは懐疑的な表情で腰を下ろした。彼女はM国のことを聞いたことがあった。実際、世界中がM国のことを知っているが、彼女にはなぜ自分がこの悪名高い場所にいるのか理解できなかった。
M国は「地獄の楽園」と「慈悲なき地」という二つの名で知られている。
M国は、世界で最も裕福で最も悪魔的な人間たちの住処である。
あらゆる罪を犯すことが彼らの得意分野だ。ただし、それを外交的にやるのだが。
路上で盗みを働いたり、道端で女性を拉致して暴行したりはしない。そのような「些細な」犯罪を行うことは弱者の仕業とみなされ、そういった行為は軽蔑される。
M国で生き残れるということは、その人物の心が死んでいることを意味する。
警察から市民まで、皆が恐ろしい人間であり、「親切」と呼べる人はほんの一握りで、その「親切」さえも家族や友人にのみ向けられる。