ジェスリンは懐疑的な表情で腰を下ろした。彼女はM国のことを聞いたことがあった。実際、世界中がM国のことを知っているが、彼女にはなぜ自分がこの悪名高い場所にいるのか理解できなかった。
M国は「地獄の楽園」と「慈悲なき地」という二つの名で知られている。
M国は、世界で最も裕福で最も悪魔的な人間たちの住処である。
あらゆる罪を犯すことが彼らの得意分野だ。ただし、それを外交的にやるのだが。
路上で盗みを働いたり、道端で女性を拉致して暴行したりはしない。そのような「些細な」犯罪を行うことは弱者の仕業とみなされ、そういった行為は軽蔑される。
M国で生き残れるということは、その人物の心が死んでいることを意味する。
警察から市民まで、皆が恐ろしい人間であり、「親切」と呼べる人はほんの一握りで、その「親切」さえも家族や友人にのみ向けられる。
とはいえ、愛を知る者もわずかながらおり、彼らはそれを惜しみなく示す。
しかし、愛する者と愛される者は頂点に立っていなければならない。さもなければ、周囲に潜む敵がそれを利用するだろう。結局のところ、頂点を目指す戦いは決して簡単ではないのだから。
ジェスリンのような臆病者がこのような国に引きずり込まれれば、きっと恐怖で失禁してしまうだろう。
「ジェスリンお嬢様、何があったのかわかりませんが、私の理解では、兄があなたと結婚したのではなく、むしろあなたが兄と結婚したということですよね?」
ジェスリンはゆっくりと頷き、椅子の背もたれに頭を預けている男を一瞥した。
「そうですね。誰と結婚するのか知らなかったのはあなたの落ち度ですから…」
「離婚したいです!」ジェスリンは即座に叫んだ。
レックスは言葉を詰まらせ、声が出なくなり、同時にジェスリンを見つめている兄を見た。
その威圧的な目が自分を見つめているのを見て、ジェスリンは首をすくめ、ソファーで丸くなりそうになった。
「私たちの契約は1年だ」彼は言った。その強い声から、その契約以外は受け入れないことは明らかだった。
「で、でも、私があなたと結婚した理由はもう終わりました。私は負けました」どこからその勇気が湧いてきたのかわからなかったが、湧いてきてよかった。
「私にも条件があって、それを言ったはずだが?」マーベリックは濃い茶色の眉を上げて尋ねた。