悪いレックス

「レックス?」

レックスはドアの方を振り向いた。ドアは閉まっていなかったので、セレスティンの声が聞こえた。シャワーを出て、ハンガーからバスローブを取り、外に出た。

部屋から出てきたとき、中には誰もいなかった。セレスティンはリビングに行ったのだろう。しかし、ドアに向かおうとした矢先、向こう側からドアが押し開けられ、心配に満ちた彼女の美しい顔が視界に飛び込んできた。

「やあ」レックスは生気のない、少しかすれた声で言った。ドアを少し開けたまま、部屋に戻った。

セレスティンは入ってきてドアを閉めた。「ねえ、素敵なお家ね」彼女は何を言えばいいのか分からなかった。今、鏡の前に立っている若者は、いつもとは違うレックスだった。

「ん」彼は返事をし、ヘアドライヤーを手に取った。

「レックス」彼女はハンドバッグをソファに置き、その近くに立った。「私たちはあなたの家族よ...あなたの兄は」彼女は、それが彼が既に知っていることだと分かっていたが、今の彼の痛みを和らげる言葉が見つからず、途方に暮れていた。

レックスはめったにこのような状態にならないが、なった時は、まるで生ける屍のようなマーベリックと変わらない。このようなレックスは誰も見たくない。一人のマーベリックで十分で、死の匂いを漂わせる別のマーベリックは必要ない。

「私たちは皆、いわゆる家族が最大の敵になることに慣れているわ。あの人が改心してくれることを願い続けているのに、裏切られ続けるのは辛いことよね。でもレックス、彼女は変われないということを受け入れるべきよ。彼女はあなたを愛することができない―」

「じゃあ、君は?」彼はゆっくりと彼女を見た。「セレスト、君は僕の人生のその女性になってくれる?」

セレスティンは喉に詰まった塊を飲み込んだ。目をバッグに落とし、それを拾い上げて出ようとしたが、レックスは今回、彼女の思い通りにはさせなかった。

彼は大きな歩幅で彼女に近づき、彼女がドアを完全に開ける前に、セレスティンを見つめながら手でドアを強く閉めた。

「レックス、また同じことを繰り返すの?」彼女は疲れた様子で尋ねた。

「僕の女性になってくれる?セレスト」

彼女は彼を見つめた。正直、これほど真剣なレックスを見たことがなかった。この瞬間、彼はマーベリックの雰囲気を醸し出していた。

「レックス、お願い、やめて―」