なんて父親だ

「携帯どこに落としたの?ずっと電話してたのよ」

「一回しか電話してないでしょ」とジェスリンは言い返した。

「それは関係ないわ。メール確認してみて。まだ見てないでしょ。ルーベンと私が先ほど受け取ったから、あなたにも来てるはずよ」

「わかったわ…」

「ねえ、電話切らないで。スパークルエンターテインメントがプラットフォームで愚かな発表をしたから、あなたにもオーディションの招待状が来てるか確認したいの。フィアレスエンターテインメントも彼らを怒らせたくないはずだから」

ジェスリンは横に置いてあったラップトップを開き、メッセージ通知を確認した。開いてみると、フィアレスエンターテインメントからの招待状があった。「招待状が来てるわ」

「やったー!もし来てなかったら、私も断るつもりだったの。スパークルエンターテインメントと対抗できるだけの後ろ盾があるみたいね」

「私もそう思う。業界に参入してまだ5年の新興企業なのに、抑圧の中でトーリアのような素晴らしいアーティストを輩出できたわ。それだけでも、彼らが無名の存在じゃないことの証明になるわね」

「その通りよ。これから新しい服を買いに行くわ。来週のオーディションで見苦しい格好はしたくないもの。じゃあね!」ロリータは電話を切った。

通話が終わった後、ジェスリンは他にすることはないかと考え、ふと思いついた。エマとエイバから連絡を受けていないのは随分と長かった。SNSを開くと、2000人以上いたファンが500人程度に減っているのを見て、ため息をついた。

「このアカウントはもう死んでるわね。新しいアカウントを作る時期かもしれない」と彼女は呟いた。しかし、アカウントを閉じる前に、彼女の元マネージャーとデリーエンターテインメントでクリスティーンのボイスアーティストだった別のアーティストについてのニュースを目にした。

ニュースによると、マイルズ支配人とその女性はデリーエンターテインメントを退社し、M国のクリスティーンのマネージャーとアシスタント(ボイスアーティスト)として付いて行ったが、残念ながらそのボイスアーティストはスパークルエンターテインメントでクリスティーンのアシスタントとして適任ではなく、解雇された。しかしM国での窮地の中、不運にも暴徒に遭遇。彼らの要求を拒否したため殺害され、所持品も奪われたという。