危機に瀕した乙女を救う

クリスティーンが観客を操作することに忙しい間、ジェスリンはフィアレス・エンターテインメントに戻っていたため、会場で起きていることには気付いていなかった。

会社の1階に足を踏み入れた瞬間、建物内を歩いたり座ったりしているアーティストたちの騒がしい声が止み、突然彼女が注目の的となった。

ジェスリンは彼らの反応をそれほど気にしなかった。そもそもアーティストたちは最初から彼女のことを好いていなかったのだ。ほんの一握りの人々だけが、彼女を扱いやすい存在として見ていた。おそらく、今の彼女がまだ取るに足らない存在だからだろう。

まるでリモコンの再生ボタンが押されたかのように、アーティストたちは突然笑い出し、彼女を指差しながら携帯の画面を読み始めた。嘲笑の的になるのは不愉快だったが、トラブルを避けたい'弱い'新人として、彼女は気にせず歩き続けた。

また彼女についての新たなスキャンダル記事が出たに違いない。彼女はそう思った。もう慣れてしまった。毎日誰かが、暇なアーティストたちが所属しているグループチャットで、彼女について何か言いたがるのだ。

ジェスリンはエレベーターに向かったが、エレベーターが故障していたため、階段を急いで上がることにした。10階まで階段を使うのは大変な労力だ。なぜマネージャーが10階をオフィスに選んだのだろうと、ふと疑問に思った。

5階まで上がったところで、ジェスリンは疲れて、膝に手をついて休憩を取った。そのとき、その階の部屋の一つのドアが開き、ショートパンツとタンクトップ姿の5人の女の子たちが、汗を大量にかきながら出てきた。ダンススタジオから出てきたようだった。

可愛らしく繊細な女の子たちを見て、ジェスリンは心の中で微笑んだ。

スパイス・ガールズ。会社が育成している3番目のガールズグループだ。彼女の調査によると、会社はこれらの女性的な魅力に溢れた可愛い女の子たちに可能性を見出し、惜しみなく資源を投入しているという。

「ハハハ...あのステップは難しかったけど、ミミ姉さんが何回かで出来るようになって...」階段にいるジェスリンを見た途端、その女の子は突然話すのを止めた。

「おや、これは誰かしら?...」彼女は冗談めかして尋ねた。

「世界一の美人さんよ」別の子が皮肉を込めて答えた。