佐藤大輝は手の中の写真を見つめていた。
写真の中の男は今より若々しく、眼差しは相変わらず深みがあるものの、表情には活気があり、唇の端さえも微かに上がっていた。
そして彼の隣には、沢井恭子が無表情で立っており、不本意そうで、近寄るなという雰囲気を全面に出していた。
背景は海外のある大学の図書館だった。
二人の後ろには留学生や大学生が大勢いたが、二人は並んで立ち、どちらもカメラに集中して目を向けていた。
陽光が横の木々から差し込み、まだらな影が彼らの顔に映り、明暗が交錯して、まるで時空を超えたような錯覚を与えていた。
佐藤大輝はこの写真を見つめ、表情に戸惑いの色が浮かんでいた。
佐藤さんは彼の様子を見て、見たいと思いながらも恐る恐る、佐藤澄夫を押した。
佐藤澄夫は佐藤さんの威圧的な視線の下、仕方なく佐藤大輝の後ろに行き、つま先立ちで首を伸ばして覗き込み、驚いて言った。「兄さん、これ兄さんじゃないですか!」
佐藤大輝は眉をひそめた。
写真の人物は確かに自分だった。
五年前の自分で、当時眉間に怪我をしており、治癒後半年間は目立たない傷跡が残っていた。注意深く見なければ分からないものだった。
日付を見てみると...確かにその日、彼は身分を隠して、ある計画の調査のためにこの大学に控えめに訪れていた。
しかし、沢井恭子と写真を撮った記憶は全くなかった。
だが、時間も場所も全て合っている...
佐藤大輝は沢井恭子を見た。
彼は常に自分が記憶喪失になったことはないと確信していた。ただ五年前のあの夜、誰かに計略にはめられ、彼女と関係を持ってしまっただけだと。
だから沢井恭子が彼の前に現れ、半年間付き合っていたと主張した時、彼は彼女を詐欺師だと思い込んだ。その後もこの女性は何度も彼を誘惑し、好きだと言い続けた...
そのため佐藤大輝は彼女に対して常に冷たい態度を取っていた。
三人の子供が彼女の産んだ子だと分かっても、彼は譲歩して彼女と三人の子供を佐藤家に住まわせ、佐藤夫人という身分以外の全ての栄誉を与えただけだった。
しかし今この瞬間、手の中の写真を見て、そして怒っている彼女の様子を見ると、一瞬、もしかしたら自分の記憶が間違っているのではないかとさえ思った。
でも、それはありえない。