第47章 景山誠の身分

沢井奥さんは今や完全に道徳的な高みに立っていた。

国内の富豪たちの財産分配の不均衡は現状であり、家族企業を発展させていくには、株式を均等に分けることはできず、必ず不満を持つ子女が出てくる。

まして沢井奥さんは沢井千惠の養母であり、法律上では養女にも平等な財産分与権があるとはいえ、道徳倫理的には、通常養子養女は自ら譲歩するものだ。

結局、沢井奥さんが言うように、家庭を与え、育ててくれたことは、孤児にとってはすでに恩恵なのだから、人は知足らずであってはいけないのではないか？

多くの人々が沢井千惠を批判するのも、この理由に基づいている。

沢井家がなければ、沢井千惠は一生孤児院で育ち、十八歳で追い出されて自力更生し、大学に行けるかどうかも問題だったはずで、今のようなエリートにはなれなかっただろう？

沢井千惠自身もそう考えていた。

だから彼女は稼げるようになってからは、ずっと真面目に沢井家の会社で働いていた。

彼女の能力からすれば、沢井奥さんが彼女を利用していることくらい分からないはずがない。

しかし過去の彼女は、利用する一方で、奥さんは自分に対して愛情を持っていると感じていたため、たとえそれを知っていても、決して不平を言わず、むしろ多くの仕事をこなして、沢井奥さんに自分の価値を認めてもらい、より親密になりたいと願っていた。

愛に飢えた人は、幼少期を癒すのに一生かかる。

これも沢井恭子と景山誠が早くから沢井奥さんの本性を見抜いていながら、ずっと沢井千惠の前では暴露しなかった理由だ。

沢井千惠は分かっていた。今日以降、必ず世論の非難を浴びることを。しかし、自分が一生沢井家のために尽くすことはできても、娘にまで尽くさせることは許せない。

彼女は非難される覚悟はできていた。しかし、この突然現れた人物は誰なのか？

五十嵐貴代美……沢井奥さんの名前を、どうして知っているのだろう？

沢井奥さんも長い間誰かに名前で呼ばれることはなかった。そのため、最初にこの名前を聞いた時、少し戸惑い、海浜市の旧知の人かと思った。

彼女は五十嵐奥さんを見て、相手が優雅で気品があり、一目で非凡な出自であることが分かった。思わず尋ねた：「あなたは？」

五十嵐奥さんは頭を下げ、淡々と言った：「私は五十嵐家の者です。」

五十嵐……