五十嵐正則がそう言うと、その場にいた人々は安堵のため息をついた。
ただ佐藤和利の澄んだ声だけが尋ねた。「どうしてですか?」
五十嵐正則は彼を全く見向きもしなかった。
沢井千惠は、これが孫を教育する良い機会だと思い、彼に向かって言った。「新しい会社を引き継ぐとき、特に私たちが詳しくない分野では、会社を現状維持するのが最も賢明な方法よ。結局、会社が新しい経営者に変わったばかりの時に、ベテラン社員やトップスターを解雇すれば、社内の人心が不安定になり、混乱が起きかねないわ。」
最も可能性が高いのは会社の倒産だ。
そうなれば、彼らが引き継いだ意味がない。
五十嵐正則は頷いた。「その通りだ。木村卓司と金城栄治は会社の幹部だ。簡単に交代させるわけにはいかない。海王エンターテインメントはお前に譲ったとはいえ、かつては五十嵐家の子会社だった。私の顔を立てて、今回は見逃してやろう。彼らは景山誠がお前の祖父だということを知らなかったのだから。坊や、覚えておきなさい。身内びいきをしてはいけないし、私怨で報復してもいけない。」