第102章 工具人沢井恭子

佐藤大輝の書斎にはバーカウンターがあった。

彼はそれを開けて、テキーラを一本取り出し、グラスを二つ用意した。

振り返ると、沢井恭子が彼の机の上の絵を見つめているのが目に入った……

机の上の絵は裏返しになっていた。

そのため、沢井恭子が今見ているのは裏面で、画用紙の質が良いため、裏面からは何も見えなかった。

しかし佐藤大輝は飲み食いもせず、机の上にはこの絵しかなかった……

沢井恭子は視線を戻した。

この人は亡くなった初恋の人を偲んでいるのだろうか?

彼女が考えている間に、佐藤大輝はグラスとお酒を持ってきて、ソファに置こうとしたが、沢井恭子はバルコニーの方へ歩いていった。

書斎のバルコニーには座布団が二つ置かれ、その間にはお茶を飲むためのテーブルがあった。彼女は適当に一つの座布団に座り、「ここで飲みましょう、雰囲気がいいわ」と言った。