山村治郎はその言葉を聞いて少し驚いた。「妹?」
山村家のお爺さんは彼に言った。「ぼーっとして何してるんだ?早く小姑さんって呼びなさい!これが私の義理の妹だよ!」
そして沢井恭子に向かって言った。「これは私のバカ息子だよ。妹よ、私に会いに来たのかい?」
「違います」
沢井恭子は意味ありげに山村治郎を一瞥すると、五十嵐正弘の病室へと向かった。今は人命救助が最優先だ。
山村家のお爺さんは車椅子を動かして追いかけようとしたが、力を入れても車椅子は動かなかった。そこで気づいたのは、山村治郎が車椅子を掴んでいて、沢井恭子が去った方向をぼんやりと見つめていることだった。「父さん、あの日、父さんを救ってくれたのは彼女なの?」
「そうだよ、なんでそんなに礼儀知らずなんだ?」山村家のお爺さんは彼を叩いた。「早く私を追いかけなさい!」