第114章 全容を知らずに、コメントを控える

弾幕が爆発した:

——どうしたの?

——なんだよ!山崎夏枝が歌っているのに、なぜ咳の声が聞こえるんだ?

——まさか、口パク、本当に口パクだ!

——そんなはずない!私の奈江子の声はとても特徴的で、偽物なんてありえない!信じられない!

……

次々と弾幕にはクエスチョンマークが並んだ。

会場からはため息が漏れ、中には立ち上がって舞台を信じられない様子で見つめる人もいた。

千人の観客のうち、山崎夏枝のファンは少なくとも三百人はいて、その三百人は今にも崩壊しそうだった。

彼女たちは山崎夏枝のために正義を取り戻すためにここに来たのに、今の状況は完全に彼女たちの顔に泥を塗るものだった!

舞台上の山崎夏枝はようやく問題に気付いた。

彼女は信じられない様子で目を開け、口は半開きのまま、イヤモニからは咳の音が聞こえ、その音は次第に激しくなり、マスクの下の顔が一瞬で変わった!

彼女は会場の騒然とした様子を見つめた。

そして急にマイクを見下ろした。

彼女はついに、舞台事故が起きたことを悟った!!

審査員席の沢井恭子と小谷千秋も呆然としていた。二人は実は山崎夏枝が口パクをしているとは全く思っていなかった。結局彼女はデビューして5年になるし、すべての曲でイルカボイスを売りにしていたのだから。

どうして5年間も偽装できたのだろう?

ただ、彼女自身のイメージも、舞台での雰囲気も、透明感のある歌声とは合っていなかった。それが沢井恭子と小谷千秋が疑問を投げかけた理由だった。

しかし今…二人は目を合わせ、その眼差しには驚きが満ちていた。

舞台上の山崎夏枝はさらに慌てふためいた。

下の観客たちは舞台に向かって紙切れやものを投げ始めた。「口パク!口パク!口パク!」

全員が怒りを込めて叫び、欺かれたかのようだった。

投げられたものに殺傷能力はなかったが、屈辱は十分だった!

山崎夏枝は舞台の上で呆然と立ちすくんでいた。

監督も制作室も驚きのあまり、しばらく反応できなかった。

そのとき、山崎武弘が突然舞台に駆け上がり、山崎夏枝の手を掴んで楽屋へと走り去った。

会場の観客たちのため息はさらに大きくなった。

司会者までもがこの状況に困惑し、どう収拾すればいいのか分からず、茫然と周りを見回していた……