第168章 目の前の人は心の人なのか?

沢井恭子は考え込むように佐藤大輝を見つめ、なぜ突然五一八号室のことを聞いてきたのか分からなかった。

しかし、彼女が五一八号室だった時、佐藤大輝とは知り合いではなかったはずだ。

彼女は理解できず、しばらく考えてから言った。「知っています。どうして?調べていることが、彼女に関係があるんですか?」

やはり知っているのか……

佐藤大輝の瞳が沈み、指を強く握りしめた。なぜか突然緊張してきた。

当時、彼は匿名でその組織に加入し、五一八号室と知り合い、好きになり、恋に落ちた。しかし、彼の部下たちはその組織には入っていなかった。

藤原夏美だけが、五一八号室が爆死した日に彼と一緒にいて、一度だけ彼女に会うことができた。

だから思い出に浸るのも、彼一人きりで、寂しかった。

神様は知っている、彼女のことを考えすぎて、もう狂いそうだった。

佐藤大輝は沢井恭子をじっと見つめ、何か言いたいことがあるようだったが、どう言えばいいのか分からず、そしてこの瞬間、荒唐無稽な考えが浮かんだ。

目の前のこの人が、あの人なのではないだろうか?

しかしその考えは一瞬で否定された。

五一八号室は彼の目の前で死んだ。彼は自分の目で見たのだ。その後、現場で彼女の大量の血痕が検出された。生きているはずがない。

佐藤大輝が何か言おうとした時、突然携帯が鳴った。

彼が電話に出ると、相手が何かを言い、彼の表情が一気に厳しくなった。「分かった」

電話を切ると、沢井恭子の方を向いて言った。「佐藤澄夫が逮捕された」

「なぜ逮捕されたんですか?」沢井恭子は眉をひそめて不思議そうに聞いた。「保釈されたはずでは?」

佐藤大輝はきっぱりと言った。「この件がネット上で騒ぎになり、京都の注目を集めた。特別捜査隊がこの事件の担当として派遣されてきた。捜査隊長は厳格な人物で、以前の保釈は規則に反していると言って、再び連行した。しかも、現在持っている証拠で彼が犯人だと証明するのに十分だと言っている」

沢井恭子は少し驚いて「京都から?」

佐藤大輝は頷いた。

二人は話題を変え、五一八号室のことには触れなくなった。

沢井恭子は携帯を取り出し、鷹野隆から渡されたビデオを開いた。「続きの証拠を探してみましょう」