第168章 目の前の人は心の人なのか?

沢井恭子は考え込むように佐藤大輝を見つめ、なぜ突然五一八号室のことを聞いてきたのか分からなかった。

しかし、彼女が五一八号室だった時、佐藤大輝とは知り合いではなかったはずだ。

彼女は理解できず、しばらく考えてから言った。「知っています。どうして?調べていることが、彼女に関係があるんですか?」

やはり知っているのか……

佐藤大輝の瞳が沈み、指を強く握りしめた。なぜか突然緊張してきた。

当時、彼は匿名でその組織に加入し、五一八号室と知り合い、好きになり、恋に落ちた。しかし、彼の部下たちはその組織には入っていなかった。

藤原夏美だけが、五一八号室が爆死した日に彼と一緒にいて、一度だけ彼女に会うことができた。

だから思い出に浸るのも、彼一人きりで、寂しかった。

神様は知っている、彼女のことを考えすぎて、もう狂いそうだった。