第170章 示談書

二見恵子は慌てて上着を脱ぎ、腰に当てながら、佐藤深志の腕を掴んだ。

佐藤深志は少し驚いて「どうしたの?」と尋ねた。

「私、生理が来たみたい。先に行きましょう」二見恵子は腹部に痛みを感じていた。最近、お腹がよく痛むのだが、気にしていなかった。

子供の頃は貧しく、生活は楽ではなかった。冬は冷たい水で洗濯をし、女の子だから清潔にしたくて冷水でシャワーを浴びていたため、大人になってからは生理の度に腹痛に悩まされていた。

貧困を恐れるあまり、高校生の時から必死に佐藤深志に近づき、彼と一緒になろうとした。

結果として佐藤さんに呼び出され、20万円を渡されて佐藤深志から離れるように言われた。

20万円だ。

両親の月給はたった4万円で、20万円は何年分もの貯金に相当した。だから彼女はすぐに20万円を受け取って立ち去った。