第217章 正体を現す

沢井恭子は携帯の振動を感じた。

取り出して見ると、山村治郎からだった。

すぐには出ず、撮影現場の様子を見た。

景山誠は玉座に座り、乱れた髪が少し狂気じみた印象を与えていた。五十嵐津由子をじっと見つめる瞳は漆黒で、感情を読み取ることができなかった。

監督の「スタート!」の声とともに、五十嵐津由子が一歩前に出て詔勅を手に取り、その内容を見て怒りを爆発させ、手近な硯を掴んだ。

五十嵐津由子の目に暗い光が宿り、景山誠めがけて投げつけた。

「バン!」

硯は景山誠の額に当たった。

景山誠は最初から最後まで、まばたきひとつせず、脚本の展開を知っていることへの恐れを克服し、完全に予想外の出来事のような表情を見せた。

非常にプロフェッショナルだった。

小島監督の彼への好感度が更に上がった。