綺麗で上品な女性が中から出てきて、彼らを見ると、少し驚いた様子で「お客様がいらっしゃったの?」
紀代実は沢井恭子に紹介した。「こちらは温井琴美さん。お父様は温井家の当主で、お母様は……私の大叔母の養女なの。彼女のお母様は私の家で育ち、大叔母の跡取り娘というわけね。琴美さんは浦和音楽学院に合格して、普段はここに住んでいるの」
……少し複雑ね。
沢井恭子は頭の中で関係を整理した。
つまり、この温井琴美の母は、沢井千惠の母、つまり彼女の実の祖母の養女ということ。言い換えれば、温井琴美は祖母の養孫娘?
しかし、紀代実が彼女について話す口調には、不快感が混じっていて、この人をあまり好いていないようだった。
紀代実は温井琴美に沢井恭子を紹介した。「こちらは沢井さんです」
具体的な身分については、まだ知らされていなかった。
温井琴美は沢井恭子を観察し、紀代実に言った。「おばあさまのお部屋には近づいてはいけないはずですが、どうしてここに?」
その口調には不満が込められていた。
紀代実は沢井恭子に説明した。「大叔母が亡くなってから、この部屋には誰も入れないことになったの。温井琴美だけが掃除のために入る資格があるわ。これが温井琴美が彼女の母親によってここに住まわされている理由なの」
このことについて、紀代実はかなり不満げだった。
養女の娘が、彼らの家で好き勝手な振る舞いをし、正統な五十嵐家の者たちよりも、まるで五十嵐家の主人のように振る舞っている。
しかし、父は大叔母を非常に尊敬しており、情けは人のためならずで、大叔母の養女にも親しく接し、その意向に逆らうことを許さなかった。
そのため、温井琴美が家で上品で礼儀正しく振る舞っていても、紀代実は彼女が好きになれなかった。
入ってはいけない?
沢井恭子はその部屋を見つめ、眉をひそめた。
傍らの津由子はすぐに嘲笑うように言った。「見ても無駄よ。琴美さん以外は誰も入る資格なんてないわ!私だって一度も入ったことないのよ!」
そう言って、さらに軽蔑するように続けた。「見ればわかるわ、育ちの悪い人ね。私たちのような家では、入ってはいけない部屋は見ることさえしないものよ。そんなふうにじろじろ見るなんて、本当に失礼ね!」
沢井恭子は彼女を無視した。