白井隆司はすでに数カ所の撮影現場を回り、写真の人物を見かけたことがあるか尋ねていた。
しかし、それらの撮影現場のスタッフは誰も知らず、首を振るばかりだった。
白井隆司は歩き回っているうちに、沢井恭子がいる撮影現場にたどり着いた。
入り口で警備員に止められた。
白井隆司はまずタバコを一本取り出して警備員に渡し、さらに数言葉を交わして親しくなった。
彼の話し方は巧みで、わずか数言で警備員の心をつかんだ。
最後に、警備員は小声で言った。「中に入りたいなら、一緒に案内してあげられますよ。でも、面倒は起こさないでくださいよ!」
白井隆司は逆に口を開いた。「人を探しているんです。兄貴、うちの撮影現場にこんな顔の人がいるか見てもらえませんか?」
彼は写真を取り出し、警備員に渡した。
警備員は見てちょっと驚いた様子で、「これは私たちの撮影現場の俳優の景山誠じゃないですか?!」
景山誠はいつも優しく、誰とでも打ち解けることができた。
白井隆司は驚いた。「景山誠?姓は景なんですか?」
「そうですよ!」警備員は携帯を取り出し、ネットで景山誠の写真を検索し始めた。
不思議なことに、景山誠は一時期人気があり、最近では「玉面桃花眼」がトレンド入りしたにもかかわらず、警備員の検索は難航した。
彼は思わず不満を漏らした。「景山誠は一応俳優なのに、最近は結構名が通っているはずなのに、ネットで写真を探すのがこんなに大変とは。事務所はプロモーションもろくにしていないんじゃないですか?だから何年経っても売れないんですよ!」
しかし景山誠は俳優なので、警備員は苦労して他の撮影現場での俳優写真を見つけ、白井隆司に渡した。
白井隆司はそれを見て黙り込んだ。
お爺さんが探しているのは大物だ!
白井家さえも警戒し、その命令に従わなければならない大物が、撮影現場でエキストラを演じているなんて?まさに謎だ!
白井隆司がお爺さんから渡された写真に問題があるのではないかと考えていたとき、撮影現場から口論の声が聞こえてきた。
五十嵐紀代実は厳しい声で言った。「親族間で、利害関係だけを見るべきではないでしょう?そう言うなら、あなたは五十嵐家に何をもたらせるというの?叔母さんは少なくともエンターテインメント会社を経営しているけど、あなたは?会社のお金を食いつぶすだけの寄生虫じゃない!」