沢井恭子は頷き、真っ直ぐに階段を上がった。
この邸宅の間取りは海浜市のものと似ていた。階段を上がって二階に着くと、注意深く見回して書斎らしき場所を見つけ、そこへ向かってドアをノックした。
「誰だ?」
部屋の中から佐藤大輝の低く厳しい声が聞こえた。
沢井恭子の後を追ってきた執事は、これを見て心の中で「まずい!」と思った。
ご主人は今日、重要な会議があるため、誰にも邪魔をさせないよう言い付けていた。佐藤さんが来ても同様だった。
先ほど佐藤さんと話をしていて、沢井さんへの注意を忘れてしまっていた。
ご主人は怒り出すだろうか?
そう考えていると、沢井恭子が淡々と「私よ」と言った。
その言葉が落ちるや否や、書斎から椅子を動かす音が聞こえた。
しかし足音はドアに向かってではなく、奥へと向かっていった?
沢井恭子は少し戸惑い、何かを思い出したように書斎のドアを開けた。すると机の上にはパソコンが置かれていたが、椅子には誰もいなかった。
書斎の窓が開いており、冷たい風が入ってきていた。
沢井恭子は一瞬呆然とし、窓際に駆け寄ると、黒い車が猛スピードで走り去るのが見えた。
沢井恭子:??
彼女が呆然としている時、佐藤大輝が書斎に残したパソコンから山村治郎の声が聞こえた。「大輝さん?大輝さん、どこ行ったんですか?みんな会議を待ってますよ!」
沢井恭子はゆっくりとパソコンの前に歩み寄った。
画面上のビデオ会議には八つのウィンドウがあり、佐藤大輝のものを除いて、山村治郎と他の六人がいた。沢井恭子は見たことのない顔ぶれだった。
しかし彼らは全く異なるスタイルで、異なる国にいるだけでなく、黒人一人、白人一人もいた……
彼女を見た全員が驚きの表情を浮かべた。
その黒人が流暢な東北弁で場違いな発言をした。「これはどういう状況?女殺し屋?社長はどこだ?まさか美人局にかかったのか?」
沢井恭子:「……」
「おい、変なこと言うな!」山村治郎は丁重に皆に紹介した。「これは橘様です!早く奥様と呼びなさい!」
「……」
他のメンバーは一斉に軽蔑的な表情を見せた。
そして山村治郎は皆からのプライベートメッセージを受け取った:
【奥様?大輝さんが認めたのか?確かに綺麗だけど、大輝さんに相応しいのか?】