白井桜子は五十嵐紀代実が浦和の五十嵐家のお嬢様だと知っていた。この身分は京都四大名家にとってはそれほど重要ではないかもしれないが、彼女にとっては佐藤家と同様、高嶺の花のような存在だった。
五十嵐紀代実は最近佐藤家に滞在していて、白井桜子は彼女に会ったことがある。優雅さと決断力が見事に調和した人柄で、佐藤さんと性格が似ていて、知らない人が見たら母娘だと思うほどだった。
しかも、白井隆司は白井家の人なのだ!
そのため、このような二人が自分の家に来ることに戸惑いを感じ、つい失礼な言葉を口にしてしまった。
佐藤澄夫は表面上は大らかで、毎日ぶらぶらと過ごし、沢井恭子よりもさらに無気力に見えた。しかし実は繊細な心の持ち主で、彼女の劣等感にすぐに気付き、冗談めかして線香をあげに来たという話を持ち出し、白井桜子の緊張を和らげようとした。