三人は白井家に入った。
白井さんの母親はメイドにお茶を入れるように指示し、三人を一階のある部屋の前まで案内した。
白井さんの母親は優しい表情を浮かべていた。白井桜子の持つ穏やかな雰囲気は母親譲りだった。彼女は皆を見つめながら、ゆっくりと言った。「あと二日で、彼の命日なの」
そう言って、彼女はドアを開けた。
三人はそこで初めて部屋に入った。
沢井恭子はすぐに壁に掛けられた白黒写真に目を留めた。白井の父親は温厚な容貌で、白井隆司と少し似ていて、まさに白井家の者という感じだった。
彼女が白井隆司を見ると、彼の視線はその写真に釘付けになっていた。彼は興奮した表情で、目に光を宿し、今にも写真に飛びつきそうな様子だった。
やはり、これが白井家の次男だったのだ。
白井隆司は興奮のあまり体が震えていた。写真の人物について、お正月のたびにおばあさんが見せてくれて、これが叔父さんだと覚えておくように、もし外で見かけたら必ず家に連れて帰るようにと言っていたのだ。
白黒写真の白井家次男は、おばあさんが見せてくれた写真より十数歳年を取り、何事にも動じない落ち着きが加わっていたが、それでも一目で叔父さんだと分かった!
叔父さんは亡くなったのか?
叔父さんが亡くなっていたなんて!
白井隆司は興奮が収まると、徐々に冷静さを取り戻した。彼は唇を引き締めて白井さんの母親を見つめた。「おばさま、失礼ですが、叔父は...どのようにして亡くなられたのでしょうか?」
白井の父親の話題に、白井さんの母親は優しい眼差しを向けながら、ため息をついた。「がんでね。桜子が中学生の頃に亡くなったの」
詳しいことは、白井さんの母親は語らなかった。
白井隆司もこれ以上追及するのは気が引けた。写真の人物が叔父さんだとしても、証拠が必要だった。一枚の写真だけで白井家と認め合うわけにはいかなかった。
沢井恭子が突然口を開いた。「お参りに来たんじゃないんですか?」
その言葉で白井隆司は我に返った。
沢井恭子が先に進み出て、線香を数本取って火をつけ、数回拝んでから香炉に差し込んだ。
白井隆司と五十嵐紀代実も同じように作法を終えると、三人は白井さんの母親に別れを告げ、白井家を後にした。
玄関を出るなり、五十嵐紀代実は待ちきれない様子で尋ねた。「どうだった?」