第346章 沢井家から人が来た

白井奥さんは沢井康正の名前を聞いた途端、確かに怖気づいた。

沢井彩芽に騙されたことを知り、さらに孫娘をいじめたことを知って、特に白井桜子の凍傷を負った頬と肌を見て、相手を凍死させたいほど怒っていた。

しかし今この瞬間、彼女は黙り込んでしまった。

そのとき、彼女の携帯が鳴り始めた。

執事が急いで開くと、白井剛志からの電話だった。

白井奥さんはすぐに電話に出ると、向こうから白井お爺さんの声が聞こえてきた。「事の経緯は全て把握している。もう十分だ」

白井奥さんは目が赤くなった。

沢井康正からのプレッシャーが少し和らいだように感じ、声を潜めて強く言った。「この件は家の面子のために、警察には通報しないわ。このまま彼女を凍死させて、後で沢井家に謝罪に行けば、この件は終わりでしょう？」

白井お爺さんはため息をついた。「人や物事に対して、そんなに極端になれないのか？」

白井奥さんは即座に怒り出した。「私が極端だって？私は...」

言葉が終わらないうちに、白井お爺さんは声を大きくして怒鳴った。「以前はお前は次男のことばかり考えて、四男の家族を差別していた。お前が何をしてきたか考えてみろ」

何をしてきたか...

白井奥さんは白井隆司を見た。この孫の顔は今でも腫れているが、実は小さい頃は可愛がっていたのに。

いつから白井隆司を目障りに感じるようになったのだろう？

彼女は目を伏せ、強情を張って言った。「これからは埋め合わせをするわ！」

白井お爺さんは再び口を開いた。「では長男は？長男の子供たちは？」

白井奥さんはまた一瞬固まった。

白井お爺さんは最後にこう言った。「沢井康正から今電話があった。彼は沢井彩芽は死罪に値しないと言っていた」

確かに死罪に値しない。

警察に通報したとしても、法律上死刑にはならない。

白井奥さんは深く息を吸った。「分かりました」

電話を切ると、彼女は白井桜子を見て、言いかけては止め、しばらくしてから溜息をついた。「桜子、沢井家の当主がお爺さんに電話をしてきたの。だから今日は彼女を解放しないといけない...安心して、彼女が生きて出て行ったとしても、これからは白井家で生きていくことになるわ。生きた心地がしないようにしてやるわ！」

白井奥さんは歯ぎしりするほど憎らしかった。