第108章 セーターは和音が編んだもの（2）

「小さい頃から妹を可愛がってきたのは事実だ。良いものは妹に譲り、プレゼントも妹が先に選んでいた。でも、本当に大切な是非の判断で、お前を不当に扱ったことなどあったか？！」

佐藤おじいさんが佐藤直樹を叱責すると、佐藤家の人々は誰一人声を出す勇気がなかった。

おじいさんがこの件でこれほど怒るとは、誰も予想していなかった。

佐藤おじいさんには自分なりの原則があった。佐藤家の家長として、ある程度まで子孫たちの無茶な行動を許し、時には過ちを犯すことも容認していた。

しかし、原則に関わる問題については、おじいさんは絶対に許さなかった。

佐藤家が百年以上も繁栄を続けられた最も重要な理由は、家族の和睦だった。

佐藤直樹の態度は、彼のタブーに触れてしまった。

佐藤直樹は完全に怯えて、その場で固まってしまった。

佐藤おばあさんは頃合いを見計らって、「まあまあ、お爺さん。直樹も一時の迷いよ。ちゃんと説明すれば、分かってくれるわ。そんなに怒らないで。また高血圧が出るわよ」と取り持った。

このような時に口を開けるのは、佐藤家では佐藤おばあさんだけだった。

続けて佐藤おばあさんは佐藤直樹に言った。「直樹、お爺さんの言葉は厳しいけれど、理屈は正しいのよ。隼人の服を見てごらん。正志のと全く同じでしょう？あなたの友達からのプレゼントだって言うけど、どうして隼人にも贈ったの？信じられないなら、隼人に聞いてみたら？誰から服をもらったのか」

佐藤直樹は固まった。

朝、佐藤隼人の服を見た時から疑問に思っていた。

今、おばあさんにそう言われて、やっと気付いたようだった。

佐藤直樹は両親と兄を見つめた。

突然、先ほどの自分の態度が良くなかったことに気付いた。

憎んでいたのは佐藤和音であって、彼らに八つ当たりするべきではなかった。

佐藤直樹は気まずそうに顔をそむけた。

岡本治美は優しく言った。「もういいのよ。最近気持ちが落ち着かないのは分かっています。お母さんを怒鳴ったことは気にしていないわ。ただ、お父さんとお母さん、そしてお兄さんの気持ちを分かってほしいの」

佐藤直樹は小さく頷いた。

胸の内は複雑で、もう食欲も失せていた。

佐藤直樹が皆の言い分を受け入れたのを見て、佐藤賢治たちもほっと胸をなでおろした。