「どうして熱が下がらないの?」
佐藤明人は時々佐藤和音の額に手を当てて確認していた。点滴はもう半分以上使っているのに、まだこんなに熱が高いままだった。
お婆様も心配していたが、焦っても仕方がない。薬を投与しても、すぐには効果が出ないものだ。解熱には時間がかかる。
佐藤和音は体が重く感じ、うつらうつらと悪夢を見ていた。
夢の中で彼女は以前の佐藤和音で、重病で病院のベッドに横たわっていた。携帯の連絡先を開いても、連絡できる人は誰一人としていなかった。
夢の中の彼女は自分が死にかけていることを知っていたが、最期の言葉を誰に伝えればいいのかわからなかった。
ぼんやりと佐藤和音は目を覚まし、夢の中と同じような病室が目に入った。
「目が覚めた?」
傍らにいた佐藤明人の声が和音の思考を中断させた。
佐藤和音は彼の方を向いた。
佐藤明人はまだパジャマ姿のまま、心配そうな表情で彼女を見つめていた。
病室のソファーにいたお婆様も立ち上がった。
「おりこ、大丈夫?」
お婆様が近寄ってきた。
佐藤和音は自分が病気になったことを思い出した。
この体は抵抗力が弱いことを忘れていた。こんなに無理をしてはいけなかったのだ。
「大丈夫です」
佐藤和音は口を開いた。いつもより弱々しい声で、言葉を発するのも困難だった。
「何が大丈夫なの、明らかに具合が悪いじゃない!」お婆様は心配で胸が痛くなった。「お医者様が言うには、しばらく熱が出ていたから意識がもうろうとしていたのよ。夜中に具合が悪くなって、一人で我慢していたんでしょう?」
お婆様の推測は当たっていた。佐藤和音は昨夜一時近くまで仕事をしていて、体調の悪さを感じていた。
家族を心配させたくなくて、そのまま寝てしまった。
佐藤和音が答えないので、お婆様は自分の推測が正しかったことを悟った。
ベッドに横たわる小さな体を見て、お婆様は涙ぐんでしまった。「もう、困ったわね!具合が悪くなったら言いなさい!私はまだまだ若いのよ!夜中に起こされたって平気よ!見なさい、熱が長引いて胃腸炎まで起こしてしまって!もう、おかゆしか食べさせないわよ!美味しいものは全部禁止!」