「どうして熱が下がらないの?」
佐藤明人は時々佐藤和音の額に手を当てて確認していた。点滴はもう半分以上使っているのに、まだこんなに熱が高いままだった。
お婆様も心配していたが、焦っても仕方がない。薬を投与しても、すぐには効果が出ないものだ。解熱には時間がかかる。
佐藤和音は体が重く感じ、うつらうつらと悪夢を見ていた。
夢の中で彼女は以前の佐藤和音で、重病で病院のベッドに横たわっていた。携帯の連絡先を開いても、連絡できる人は誰一人としていなかった。
夢の中の彼女は自分が死にかけていることを知っていたが、最期の言葉を誰に伝えればいいのかわからなかった。
ぼんやりと佐藤和音は目を覚まし、夢の中と同じような病室が目に入った。
「目が覚めた?」
傍らにいた佐藤明人の声が和音の思考を中断させた。