奥村茂は菊地秋次の質問に答えるべきかどうか躊躇したが、青山先生の許可を示す態度を見て、ようやく答え始めた:
「ありません」奥村茂は否定する時、声に迷いはなかった。「でも、調べてもらえばいいです。この件について疑問を持っているのは私だけではありません。学校の掲示板のコメントを見てください。みんな同じような疑問を持っています」
一人だけの疑問ではないからこそ、奥村茂は自分の疑念を口にする時、とても自信に満ちていた。
三人成虎という言葉の通り、同じことを考える人が他にもいると分かった時、自信は徐々に増していった。
「つまり、証拠はないけれど、大衆の支持があるから、衆を罰せずという考えで、間違いを犯すのが一人じゃないから全く心配していないということですか?」菊地秋次の口調には嘲りが滲んでいた。
「あなたは...」奥村茂は驚いて菊地秋次を見つめた。
何か様子がおかしいと感じ取った。
「説明を続けなさい。合理的な説明ができなければ、名誉毀損として扱います」
「いいえ、佐藤和音が不正な手段で今の成績を得たのは明らかです。カンニングは恥ずべき行為で、私が彼女を告発するのは当然のことです。不公平なことを見たら積極的に報告すべきではないですか?」
「ええ、その通りですね。不公平なことを見たら積極的に報告すべきです。ただし、あなたはどの目で見たんですか?ん?」
不公平なことを見たら、まず「見る」という行為が必要だ。
菊地秋次が奥村茂という生徒を見る目には、嘲笑いが満ちていた。
奥村茂は言葉に詰まった。
誰も見ていない。他の人も見ていないし、奥村茂も見ていない。
ただ成績が出た後に、不自然だと感じただけでそう思い込んだのだ。
菊地秋次は横に立っているボディガードに向かって言った:「彼の両親に連絡を。この生徒は権力で人を虐げる行為を非常に嫌っているようだから、私が権力で人を虐げるとはどういうことか教えてあげよう」
奥村茂が自分は「権力で虐げられた」と確信しているなら、菊地秋次はその願いを叶えてやろうと思った。
そんな要求なら、秋次おじいさんは十分に満たしてやれる。
すぐにボディガードは奥村茂の父親に電話をつなげた。
奥村茂の父親はある会社の中間管理職で、家庭収入はまずまずだった。そうでなければ息子を栄光高校に通わせることもできなかっただろう。