第356章 自分で頑張りたい

「私は、自分の力でやっていきたいの」

佐藤和音は少し躊躇した後、佐藤正志に答えた。

自分の力でやっていくことは、自立の表れだ。

彼らの可愛い妹は自立した。

でも、早すぎる自立だった。

彼女はまだ15歳で、両親や兄に甘えることができる年齢なのに。

傷つけられたり、悔しい思いをしたりした時には、泣く権利だってあるはずなのに。

それなのに「自分でやりたい」の一言。

人が最初に「自分でやりたい」と反応する時、それは心の中で、もう頼れる人がいないということを意味している。

あるいは...かつて頼れると信じていた人々に、失望させられたのかもしれない。

そう、彼らは彼女を失望させたのだ。

あの出来事以来、彼女は自分を信じることを選んだ。

あの時、ホテルの映像が消失したことを彼らに告げ、調査を依頼する機会があったはずだ。