本社の入り口で、山田燕は岡本治美に出会った。
今日の山田燕は華やかな服装で、メイクも丁寧に施し、表情も以前よりも晴れやかに見えた。
長年彼女の胸に溜まっていたモヤモヤが、今日ようやく吐き出せたような気分だった。
以前は自制心を持っていた彼女も、今では自制する理由が何もなくなっていた。
「お義姉さん、こんにちは」山田燕は笑顔で岡本治美に挨拶し、その笑顔は明るく愛想がよかった。
岡本治美は冷たい目で山田燕を一瞥した。「あなた、今とても嬉しいの?」
岡本治美は、これが喜ぶべきことだとは少しも思っていなかった。
もし彼女の三人の息子のうちの一人がこのようなことをしたら、彼女は絶対に喜べないだろう。
「お義姉さんはなんておっしゃるの。確かにこのことは私も事前に予想していませんでしたが、みんな佐藤家の者なのですから、お爺さまが株を浩人に渡したいと思うなら、母親である私が悲しい顔をしなければならないというの?」