菊地秋次は佐藤浩人が現在滞在しているホテルを訪ね、彼を探した。
今の佐藤浩人を見つけるのは他の人には難しいが、菊地秋次にはできる。
佐藤浩人はかつて菊地秋次の叔父の下で働いていた。
佐藤家のこの狼の野性は彼ら自身が育てたものだが、後の爪と牙は菊地おじさんの下で鍛えられたものだった。
菊地おじさんは菊地秋次に、当初は佐藤浩人の狼性を見込んで、自分の下で働かせることにしたのだと語った。
後に佐藤浩人が独立する能力を持った時、菊地おじさんは彼を引き留めなかった。菊地おじさんの言葉によれば、狼は飼うことはできるが、檻に閉じ込めて飼うことはできないのだという。
菊地秋次が佐藤浩人に会った時、佐藤浩人はホテルの部屋の床から天井までの窓の前に座っていた。
目の前には碁盤が置かれ、その上の局面は詰んでいた。