483. 菊地秋次の専属医師(2)

それは雇用契約書だった。

内容は彼が佐藤和音を自分の家庭医として雇うというものだった。

「君は……」菊地秋次はこの瞬間の自分の気持ちをどう表現すればいいのか分からなかった。

「どうしてこんな考えになったの?」

「あなたのおじいさんが私を探して、あなたの専属医になってほしいと言ったの」佐藤和音は嘘をつかない。

菊地秋次はすぐに理解した。彼が玉のペンダントを贈ったことは、おじいさんの目を逃れることはできなかったのだ。

「じゃあ、君自身は……引き受けたいの?」菊地秋次は尋ねた。

この質問をするとき、菊地秋次の口調には慎重さが滲んでいた。

「うん、引き受けたいから来たの」佐藤和音は答えた。

菊地おじいさんは彼女を強制したわけではなかった。

要求を出したのは彼だが、承諾したのは佐藤和音自身のことだった。