第055章:やり過ぎるな

午後は試験科目が多かったため、生徒たちが試験を終えた頃には日が暮れていた。多くの生徒は試験を終えると、霜に打たれた茄子のように疲れ果てていた。

「ああ、化学の試験が難しすぎた。今回は下位5クラスに落ちそうだ……」

「今までの月例テストは2日に分かれていたのに、今回は1日に詰め込まれて、頭が爆発しそうだよ。」

「そうだよね。午前中はまだ調子良かったけど、午後は頭の中がグチャグチャで、貞観の治も忘れちゃった。」

みんなが不満を漏らし、明らかに大半の生徒が実力を発揮できなかったようだった。

校門の前で、馬場絵里菜は出てくるとすぐに林駆たちの姿を見つけた。高橋桃もすでに早めに出てきていた。

「絵里菜ちゃん!」高橋桃は彼女に向かって手を振り、興奮した表情を見せた。

馬場絵里菜が目を上げると、数人の後ろに黒いリンカーンリムジンが停まっており、黒いスーツを着た運転手が無表情で車のドアの前に立っているのが見えた。

全員が揃ったところで、藤井空は馬場絵里菜を一瞥し、口を尖らせて言った。「みんな揃ったから、乗ろうよ。このままじゃ暗くなっちゃうよ!」

馬場絵里菜は馬鹿じゃないので、藤井空が自分に対して明らかな拒絶感を持っていることを感じ取り、不思議に思った。確かに自分が一番遅く出てきたが、試験が終わってからたった数分しか経っていないのに。

藤井空の表情を見ていると、まるで自分を待っていて日が暮れてしまったかのようだった。

しかも、以前のラブレターの件にも彼が関わっていたのに、被害者である自分がまだ彼に文句も言っていないのに、今は誰に見せびらかすつもりなのか、威張り散らしている。

心の中で目を回しながら白目をむいていたが、馬場絵里菜は表面上は平然とした態度を保っていた。文句を言うのは勝手だが、こんなことで路上で喧嘩するわけにはいかない。

むしろ夏目沙耶香が藤井空を睨みつけ、そして積極的に馬場絵里菜に声をかけた。「乗りましょう、馬場さん。」

ドアを開けると、心地よい木の香りが漂ってきた。車内は非常に豪華な内装で、果物や飲み物も用意されていた。高橋桃はもちろん、馬場絵里菜も前世でリムジンに乗ったことはなかった。