馬場依子と吉田清水の二人は、その言葉を聞いて心が震えた。
KATEの万年筆と言えば、世界的な高級ブランドで、一本数千円から数万円もする。
二人とも家庭は裕福な方だが、そんな高価な万年筆は使えない。
馬場依子が林駆に限定品を贈ったのに、林駆がなくしてしまったなんて……
考えただけでも心が痛む。
「林駆さんも不注意すぎるわ。あんな高価な贈り物を、どうしてなくすことができるの」吉田清水は馬場依子のことを気の毒そうな表情で言った。
鈴木玲美もうなずき、逆に馬場依子を慰めた。「彼も故意じゃないんだから、依子、気にしないで。きっと林駆さん自身もすごく後悔して自責の念に駆られているはず。だから午前中ずっと笑顔がなかったのね」
鈴木玲美は林駆が午前中ずっと暗い表情をしていたことを、馬場依子の話と結びつけた。