今回、馬場絵里菜は包丁の背で彼を叩くことはせず、ただ火を噴きそうな目で彼を睨みつけた。
この人の厚かましさはどうしたことだろう?招かれもしないのに来ただけでなく、彼女が注文した料理まで食べるなんて!
井上裕人はエスカルゴを味わいながら、にやにやと笑顔で馬場絵里菜を見ていた。何も言わなかったが、その表情は本当に殴りたくなるようなものだった。
エスカルゴを一つ飲み込んだ後、井上裕人は物足りなさそうに舌先で唇を舐めた。その仕草を他の人が見たら、きっとこの男性はセクシーで魅力的だと感じただろう。
しかし馬場絵里菜にとっては目障りでしかなかった。
井上裕人:「もう一つ食べるよ!」
馬場絵里菜:「……」
フランス料理は繊細さと味を追求するもので、エスカルゴの皿には5個しか入っていなかったが、井上裕人は既に二つも食べてしまっていた。