第441話:無償の親切は、悪意か盗みか

絵里菜は追いかけず、古谷始の後ろ姿が夜の闇に消えていくのを見つめていた。

手の中の車のキーを握りしめながら、馬場絵里菜の心は複雑な思いで一杯だった。彼女が古谷始に親しみを感じたのは、馬場輝に感じたのと同じ感覚を古谷始に見出したからだった。

しかし、このプレゼントは、絵里菜を初めて戸惑わせることになった。

「絵里菜、どうしよう?」馬場輝はさらに困惑していた。古谷始が高級スポーツカーを置いていって、そのまま行ってしまったなんて?

足立区の道は元々狭く、この車を家の前に停めると道の半分近くを塞いでしまう。

「中庭に入れましょう。」

絵里菜は思考から戻り、落ち着いた声で言った。

ポルシェ社の車は数十万円から数千万円までさまざまだが、この車は世界限定モデルで、その価値は少なくとも数百万円はする。このまま路上に停めておくのは危険すぎる。明朝には必ず人だかりができてしまうだろう。