そのため、二人はそれぞれの秘密を守るために、その日のことについては一切口を開かず、お互いの関係にも何の影響も及ぼさなかった。二人の関係は以前と変わらず、快適で自然なままだった。
「どうしてこんな場所を選んだの?」馬場絵里菜は少し面白そうに周りを見回した。このスイーツショップは典型的な少女風のスタイルで、古谷始の雰囲気とは全く合わなかった。
「気に入らない?」古谷始は少し不思議そうに目を瞬かせた。彼がこの場所を選んだのは、もちろん絵里菜を喜ばせるためだった。
女の子は、甘いものを食べたり、このような夢のような場所に来たりするのが好きなんじゃないのか?
馬場絵里菜は意味深な表情でうなずいた。「好きよ、いいわね。」
古谷始はそれを聞いて、思わず愛おしそうな微笑みを浮かべ、長い指でスイーツメニューを差し出しながら、絵里菜に優しく言った。「見てみて、何が食べたい?」
馬場絵里菜はちらっと見た。スイーツの名前は全て芸術的で、曖昧な感じだったが、彼女は甘すぎる食べ物は好きではなかったので、適当に青りんごを使用した「グリーンフォレスト」というスイーツを指さした。「これにする。」
古谷始はうなずき、立ち上がってカウンターに注文しに行き、番号札を持って戻ってきた。
古谷始が座ると、馬場絵里菜は彼を見つめながら話し始めた。「古谷始、前にくれた車、お兄ちゃんに乗らせてるの。」
話しながら、馬場絵里菜は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた。確かにその車は古谷始から贈られた誕生日プレゼントだったが、彼女は運転免許を取るまでまだ数年かかるし、その車をずっとほこりをかぶらせておくわけにもいかなかった。
ちょうどお兄ちゃんが一発で運転免許を取得したので、彼女はその車のナンバーを取得して、お兄ちゃんに乗らせることにした。
実は最初、彼女はその車を古谷始に返そうと思っていたが、後で考え直した。そのプレゼントは少し高価すぎると感じていたが、心の中では、もうその車は返せないだろうと分かっていた。
古谷始は気にせずうなずいた。「いいよ、君にあげたものだから、どう使おうと君の自由だよ。」
古谷始にとって、絵里菜が彼のプレゼントを受け取ってくれただけで十分だった。
馬場絵里菜はそれを聞いて、すぐに心が軽くなった。古谷始が不機嫌になるのではないかと心配していたのだ。