馬場絵里菜の無言の表情が井上裕人の目に映った。彼が少し身を乗り出し、目元に笑みを浮かべながら馬場絵里菜を見つめ、静かに口を開いた。「ほら、僕たち二人は最高の組み合わせだと思わない?」
組み合わせってなによ!
馬場絵里菜はそのわさびを再び井上裕人の前に押し戻した。「自分で調味料を作ったなら自分で食べなさいよ。食べ物を無駄にしないで!」
井上裕人は口元に笑みを浮かべ、体を後ろに倒し、そのまま畳の上に横になった。
彼は今日、薄いグレーのトップスに濃紺のジーンズを履いていた。馬場絵里菜は以前、彼がスーツにシャツか、短パンにサンダルという姿しか見たことがなかったので、こんなカジュアルな格好は初めて見た。
むしろ見やすくなった。
井上裕人が横になってから動きがなくなったので、馬場絵里菜は思わず身を乗り出して彼を見た。
彼は両手を頭の下に敷き、目を閉じていた。長くて上向きのまつげは、まるで二つの密な小さな扇子のように穏やかさを漂わせ、全体的にとてもリラックスしているように見えた。
しばらくすると、呼吸も整ってきた。
馬場絵里菜は一瞬驚いた。寝てしまったのか?
「僕のこと、きれいだと思う?」
馬場絵里菜が驚いている瞬間、井上裕人の声が突然響き、馬場絵里菜はびっくりして慌てて尻もちをついた。
その時、店員が暖簾を開け、大きな盛り合わせの新鮮な刺身を持って入ってきた。
井上裕人は体を起こし、目元に笑みを浮かべながら馬場絵里菜を一瞥したが、それ以上は何も言わず、気さくな口調で「さあ、食べよう」と声をかけた。
そう言いながら、彼はすでに新鮮な雲丹を一皿、馬場絵里菜の前に置いていた。
馬場絵里菜も遠慮せず、箸を取って食べ始めた。
様々な新鮮な刺身、美味しい寿司、そして香り高い天ぷら……
美食は馬場絵里菜の心と味覚を同時に喜ばせた。井上裕人が選んだこの店は、以前古谷始が連れて行ってくれた路地裏の日本料理店に決して劣らないと言わざるを得なかった。
馬場絵里菜自身も東京の日本料理店をいくつか試してみたが、この店は間違いなく一流だった。
がっついて食べる馬場絵里菜に比べ、井上裕人はそれほど多くを食べず、むしろほとんどの時間、馬場絵里菜が食べるのを見ていた。