すべてが突然すぎて、井上雪絵の頭は真っ白になり、自分で考える能力を完全に失ってしまった。
そのまま馬場輝に手首を引かれて店内に入り、注文を済ませて席に着くまで、彼女の理性はようやく戻ってきた。
頬が熱く、井上雪絵は少し恥ずかしそうに俯き、馬場輝の顔を見る勇気が出なかった。
馬場輝は彼女の様子がおかしいことに気づいたようで、すぐに申し訳なさそうに言った。「この時間帯はフードコートが混んでいて、店内も狭いから、暑いんじゃない?」
明らかに、馬場輝は井上雪絵の顔が赤くなった理由を店内の暑さのせいだと思っていた。
井上雪絵は自分の顔が今頃サルのお尻のように赤くなっているだろうことは想像に難くなく、すぐに馬場輝の言葉に頷いた。「うん、ちょっと暑いね。」
ちょうどその時、店員が黒糖のかき氷を持ってきた。馬場輝はそのうちの一つを井上雪絵の前に置き、優しく言った。「これ、黒糖のかき氷だよ。食べてみて。」