しかし、その時、高橋桃は一人で船尾にいて、誰も彼女に注意を払っていなかったため、何が起きたのかを見た人はいなかった。
最終的に、警察は手がかりや有力な証拠を見つけられず、容疑者を特定することができなかった。さらに、高橋桃は発熱状態で精神的にも良くなかったため、警察も彼女が驚きのあまり幻覚を見たのではないかと考えていた。
2、3時間かけて、二人の警官は出動記録を作成した後、立ち去った。
しかし、この事件はクラスメイトの間で広まり、1組の高橋桃が水に落ちたのは、誰かに押されたからだということが知れ渡った。
警察が成果を上げられなかったことで、馬場絵里菜たちはさらに心配になった。
高橋桃は笑いながら他の人たちを慰めた。「心配しないで。一度失敗して、警察にも報告したから、その人も怖がっているはずよ。みんな心配そうな顔をしているけど、言わなければよかったかな。」
人に迷惑をかけたと思い、高橋桃は心の中で自責の念に駆られた。
夏目沙耶香はため息をついて言った。「みんな15、16歳の子どもなのに、どうしてこんな恐ろしいことができるの?これは殺人未遂よ!」
彼女はクラスメイトを極悪人と考えたくはなかったが、これはすでに2回目の出来事で、馬場絵里菜が前例だった。
馬場絵里菜も表情が良くなかった。警察に手立てがないなら、自分たちで注意するしかない。
「桃、しばらくは私のそばにいて、一人でどこにも行かないで、わかった?」馬場絵里菜は冷たい表情で言った。
高橋桃は素直にうなずいた。「うん、どこにも行かないよ。あなたにべったりくっついてる。」
おそらく点滴の薬の効果と、昨夜よく休めなかったこともあり、高橋桃はすぐに静かに眠りについた。
途中でクラスメイトが見舞いに来たが、夏目沙耶香がみんな断った。
午後3時過ぎ、高橋桃はゆっくりと目を覚まし、汗をかいて、熱も下がっていた。
ただ、体が少し弱っていて、顔色もあまり良くなかった。
しかし熱が下がったので、みんな安心した。
「午後は活動ないの?」高橋桃はベッドの頭に寄りかかって尋ねた。
夏目沙耶香はその言葉を聞いて思わず笑った。「あなたがこんな状態なのに、私たちが活動に参加する気になるわけないでしょ?菅野先生が私たちにあなたの面倒を見るように言ったの。」