第809章：これからは、俺が守る

高遠晴は動じることなく、ただもう一度問いただした。「ただ教えてほしい、そうなのか、そうでないのか。」

「違う！」柳澤夢子はほとんど怒鳴るように声を上げ、周りのクラスメイトが驚いた目で見ていることも気にせず、目は既に真っ赤になっていた。「あなたの目には今、高橋桃しかいないでしょう。あなた、彼女のことが好きなの？」

高遠晴の瞳が軽く揺れ、ズボンの両側に垂らしていた両手は思わず拳を握った。

3秒後、彼はまるで決心したかのように静かに口を開いた。「そうだ、俺は彼女が好きだ！」

その一言は、晴天の霹靂のように柳澤夢子の世界を粉々に打ち砕いた。

それはほとんど絶望と崩壊に近い巨大な悲しみで、柳澤夢子はしばらく反応を忘れ、呆然として石のように固まってしまった。

これほど長い間、彼女の晴は一人の女の子も好きになったことがなかった、彼女自身も含めて。

柳澤夢子は心の中ですべてを知っていた、すべてを理解していた。

しかし彼女にとって、高遠晴が他の女の子を好きにならない限り、彼の心の中で彼女はいつも最も重要な存在であり続けるだろう。

でも今、彼女はもうそうではなくなった……

なぜ高橋桃なの？なぜ彼女じゃないの？

柳澤夢子はこの現実を受け入れられないかのように泣きながら首を振り、高遠晴を見つめて涙ながらに言った。「信じない、信じられない。」

そう言うと、柳澤夢子は顔を覆い、学校の外へと走り去った。その背中さえも悲しみに満ちていた。

高遠晴はそれを見て、心が痛まないはずがなかった。長年一緒に育った友情は、高橋桃のために一瞬で消え去るものではない。

彼は冷淡に見えても、冷血な人間ではなかった。

高橋桃はちょうど校門に入ったところで、正面から柳澤夢子が泣きながら彼女の横を走り去るのを見て、思わず驚いた。

振り返ると、高遠晴が彼女に向かって歩いてくるのが見えた。

「彼女に聞いたの？」

高橋桃はすでに事情を察したようだった。柳澤夢子を泣かせることができるのは、おそらく高遠晴だけだろう。

高遠晴は高橋桃の横に立ち、確固として優しい目で彼女を見つめ、質問に答えずに高橋桃を赤面させる言葉を口にした。「これからは、俺がお前を守る。」

高橋桃：？？？？？

そう言うと、高遠晴は片手で斜めにカバンを掛け、もう一方の手をポケットに入れて教室棟へと歩き始めた。