徳川秋水は鈴木澪由と徳川勝の一人娘で、徳川家の後継者でもあった。
この数年間、鈴木澪由と夫の徳川勝は娘を探し続けてきた。
しかし、大海の中から針を探すようなものだった。
山下おばあさんが毎年最も恐れているのは、この古い友人の誕生日だった。
行くのも良くない。
行かないのも良くない。
そう考えると、山下おばあさんは再び溜息をついた。
徳川家の事情について白川露依も知っていたが、徳川秋水が鈴木澪由の誕生日に行方不明になったことは知らなかった。それを聞いて、彼女は驚いて言った:「なるほど、鈴木叔母さんと徳川叔父さんが誕生日を祝わない理由が分かりました。」
彼女はただ二人がそういうものを好まないと思っていた。
実は......
隠された事情があったのだ。
しばらくして、白川露依は続けて言った:「お母さん、6月18日が鈴木叔母さんと徳川叔父さんの辛い日なら、なおさら行って慰めるべきですよ。そうしないと、きっと二人はますます悲しくなってしまいます。」
それを聞いて山下おばあさんは頷いた。「あなたの言う通りね。じゃあ、チケットを予約して、17日に出発することにするわ。」
「はい。」白川露依はさらに尋ねた:「私も一緒に行きましょうか?」
「いいえ、」山下おばあさんは首を振った。「私一人で大丈夫よ。」
白川露依は徳川秋水と同世代だった。
誕生日というこの特別な日に、鈴木澪由が白川露依を見てさらに悲しむことを恐れていた。
「分かりました。」白川露依は頷き、山下おばあさんの化粧台に目を向けて、興味深そうに言った:「このブランドのスキンケア製品、見たことがないんですけど?」
山下おばあさんはすぐに答えた:「これは美人亭よ、新しいブランドなの。そうそう、このフェニックスシリーズはシミ取りができるのよ。露依、最近顔にシミができてきたって言ってたでしょう?これを使ってみたら?」
美人亭?
白川露依は興味深そうにフェニックスセットを手に取り、注意深く見た。「お母さん、これいくらですか?」
シミ取りができる製品は必ず高価なはずだ。
「820円よ。」山下おばあさんが答えた。
「いくらですって?」白川露依は驚いて目を見開いた。
幻聴かと思うほどだった。
山下おばあさんは続けて言った:「820円よ、聞き間違いじゃないわ。」