そう思うと、小林桂美は溜息をついた。
昨日、値段を上げるべきではなかったと後悔した。
今どうすればいいのだろう?
そのとき。
一台の高級車がスーパーの入り口に突然現れた。
そして、車から二人のボディーガードが降り、続いて豪華な服装の金子大志と山口茹美が降りてきた。
後ろについてきたボディーガードは当然、二人の息子である金子財弥と金子昌也だった。
昨日は歩いて来たのに、今日になって小林桂美は彼らの車がランボルギーニだと気づいた!
お金持ちは違うものだ。
「奥様、いらっしゃいませ!」小林桂美はすぐに出迎え、笑顔を浮かべた。
山口茹美はレンタルしたバッグを持ったまま、小林桂美を見つめるだけで何も言わなかった。
後ろを歩いていた金子財弥が小林桂美を見て、「うちの旦那様と奥様は今日、共同経営の名義変更手続きのために来ました。小林さん、お考えはまとまりましたか?」
小林さん?
その言葉を聞いて小林桂美は一瞬固まった。
彼らはどうやって自分の姓を知ったのだろう?
確か自分の姓を言ったことはなかったはずだが?
しかし小林桂美はすぐに気を取り直した。彼らはこんなにお金持ちで、ランボルギーニを何気なく乗り回すような人たち。自分の姓を調べるくらい簡単なことだろう。
小林桂美は笑顔で答えた。「はい、考えがまとまりました!このスーパーは主人の名義になっていて、主人も今中にいます。お金さえ払っていただければ、すぐに不動産登記所へ行って手続きができます。」
山口茹美と金子大志は相変わらず威厳を保ち無言のまま、金子財弥が続けて言った。「分かりました。では中でお話しましょう。」
そう言って、金子財弥は「どうぞ」とジェスチャーをした。「旦那様、奥様、お入りください。」
一行はスーパーの中に入った。
城井定邦は中で新聞を読んでいたが、小林桂美たちが入ってくるのを見て、すぐに新聞を置いた。
小林桂美は率先して紹介した。「定邦、この方たちが私が話していたスーパーを買いたいという旦那様と奥様よ。こちらが私の主人の城井定邦です。」
城井定邦は関係機関で働いているものの、普段付き合うのは同僚がほとんどで、本当の上流階級の人々とは接したことがなかった。山口茹美と金子大志に向かって笑顔で手を差し出し、「はじめまして、城井定邦です。」