080:複数の身分_8

そう思うと、小林桂美は溜息をついた。

昨日、値段を上げるべきではなかったと後悔した。

今どうすればいいのだろう?

そのとき。

一台の高級車がスーパーの入り口に突然現れた。

そして、車から二人のボディーガードが降り、続いて豪華な服装の金子大志と山口茹美が降りてきた。

後ろについてきたボディーガードは当然、二人の息子である金子財弥と金子昌也だった。

昨日は歩いて来たのに、今日になって小林桂美は彼らの車がランボルギーニだと気づいた!

お金持ちは違うものだ。

「奥様、いらっしゃいませ!」小林桂美はすぐに出迎え、笑顔を浮かべた。

山口茹美はレンタルしたバッグを持ったまま、小林桂美を見つめるだけで何も言わなかった。

後ろを歩いていた金子財弥が小林桂美を見て、「うちの旦那様と奥様は今日、共同経営の名義変更手続きのために来ました。小林さん、お考えはまとまりましたか?」