後になってやっと彼女は分かった。
彼女はおそらく臨海町の出身ではないから、同年代の人たちとこれほどの違いがあるのだろう。
しばらくすると、注文した料理が次々とテーブルに運ばれてきた。
大川素濃は食べながら頷き、思わず感嘆した。「この店の味は本当に素晴らしいわね」
青葉市に来てから、これほど本格的な農家料理を食べたのは初めてだった。
小林桂代は頷いた。
お年寄りがデザートの皿を持ってきて、テーブルに置きながら言った。「私と主人は生粋の青葉市の人間で、ここで五、六十年も商売をしているんですよ」
テーブルの上のデザートを見て、小林桂代は急いで言った。「おばさん、これは注文していないデザートですよ」
お年寄りは笑顔で言った。「これはお二人へのサービスです。蓮根芋餅で、全部手作りですから、召し上がってみてください」
「ありがとうございます」小林桂代と大川素濃は揃って礼を言った。
「どういたしまして」お年寄りは手を振った。
大川素濃は続けて尋ねた。「この店はおばさんとおじさんお二人だけですか?」
「手伝いの若い人が二人いますよ。私たちは年を取って、忙しくて手が回らなくて」とお年寄りは答えた。
大川素濃は蓮根芋餅を一口食べて、続けて言った。「お店は繁盛しているようですが、どうしてお子さんに手伝ってもらわないんですか?」
その言葉を聞いて、お年寄りの顔に苦い笑みが浮かんだ。「私は子供を産むことができなくて、だから、主人と私は一生子供がいないんです。実は、このお店を開いているのもお金を稼ぐためじゃなくて、年を取ると、にぎやかな雰囲気が欲しくなるんです」
大川素濃は自分の質問が不適切だったことに気づき、すぐに言った。「申し訳ありません、知りませんでした…」
「大丈夫よ」お年寄りは大川素濃の言葉を全く気にしていない様子で、「もう何年も経って慣れましたし、それに、お店に来てくれる若い人たちは、みんな私の子供のようなものです。皆さんが私のお店で楽しく食事してくれれば、それだけで私は幸せです」
最後に、お年寄りの顔に慈愛に満ちた笑顔が浮かんだ。「じゃあ、ゆっくり召し上がってください。私は仕事に戻ります」
「はい」大川素濃は頷いた。