116:後悔薬_8

「契約違反?」この言葉を聞いて、木下才間は思わず笑った。「木下社長、私たちは契約を結びましたか?この違約金はどこから出てきたのですか?」

そうだ。

最初から最後まで、大谷家が木下才間に与えたのは口頭の約束だけで、有効な書類は何も締結していなかった。

大谷家は大企業であり、木下才間はこのような会社が詐欺まがいのことをするとは思ってもみなかった。その場で顔が青ざめるほど怒り、「あなたたち!どうしてこんなに人をいじめることができるのですか!あなたたちには契約精神が少しもないのですか!」

金子マネージャーは忙しく、木下才間とここで無駄話をしている時間はなかったので、直接電話を切った。

向こうから聞こえてくる話中音を聞きながら、木下才間は携帯電話を投げつけたい衝動に駆られたが、理性が止めた。

今は怒っている場合ではない。

彼は大谷家との連絡を続けなければならない。

結局のところ。

大谷家は今や彼唯一の取引先だった。

しかし、再び金子マネージャーに連絡しようとしたとき、相手の電話がつながらないことに気づいた。

金子マネージャーは彼をブロックしていた。

木下才間は弁護士に電話をかけた。大谷グループを訴えるつもりだったが、弁護士は契約がない状況では、大谷家のこのような行為は契約違反にはあたらないと告げた。

木下才間は信じられず、立て続けに十数人の弁護士に連絡したが、みんなの答えは同じだった。

30分後、木下才間はようやく現実を受け入れ、大谷グループには契約精神がなく、ろくでもないと罵りながら、救済策を考えた。

しかし、彼は多くの人に連絡した。

誰もこの商品を引き取りたがらなかった。

そのとき、木下才間は小林桂代を思い出した。

そうだ!

小林桂代がいる。

10日が経過し、小林桂代に在庫があったとしても確実に使い切っているはずだ。彼の手元にあるこの商品は、小林桂代にとってまさに救いの雨だろう。

そう考えると、木下才間はほっとして、携帯電話を取り出し、小林桂代に電話をかけた。

すぐに画面の向こうから丁寧な声が聞こえてきた。「もしもし、こんにちは。」

木下才間はすぐに笑顔で言った。「小林社長ですか?木下才間です。」