第27章 私は証人です

中川美鳥は背筋が寒くなり、心臓が激しく鼓動するのを感じた。

杉本瑠璃を見る目つきにも恐れが混じり、これが本当にあの世間と争わず、いじめられやすそうに見えた杉本瑠璃なのかと疑問に思った。

田中恵子は苦労して床から立ち上がり、近くにいた生徒が彼女を助け、椅子を用意した。田中恵子は座り、腕をさすりながら、中川美鳥と杉本瑠璃を厳しい目で見つめた。

「お前たち二人とも、教室で喧嘩をして、退学になりたいのか!」

以前は田中恵子も杉本瑠璃を警戒していた。杉本家が裕福だったからだ。今は杉本家が破産したので、田中恵子は当然杉本瑠璃に良い顔をしなくなった。

杉本瑠璃は田中恵子のこの態度をよく知っていた。前世では、田中恵子が強い者には弱く、弱い者には強い上に、金持ち贔屓だったため、家が破産し両親を亡くした後、田中恵子は口実を作って杉本瑠璃を冤罪で退学させた。

杉本瑠璃は知っていた。彼女が学校を退学になったことには、石川静香が必ず関わっていたはずだと。

田中恵子のような人でなし教師を、このまま教師をさせ続けたら、どれだけの生徒が被害を受けるか分からない。

「田中先生、あなたにぶつかったのは中川美鳥で、あなたの顔を引っ掻いたのも中川美鳥です。私は関係ありません。それに、これだけの生徒が見ていますが、中川美鳥が突然飛びかかってきて、私は避けただけです。田中先生が私の後ろにいたなんて知りませんでした。」

杉本瑠璃は澄んだ目で田中恵子をまっすぐ見つめ、生徒が教師を恐れるような様子は微塵も見られなかった。

「その通りです、田中先生。私が証人になれます。杉本瑠璃は何もしていません。中川美鳥が飛びかかっていっただけです。ただ、中川美鳥が杉本瑠璃に飛びかかろうとしたのか、それとも田中先生に飛びかかろうとしたのか、それは分かりませんが。」

桐生誠一が真っ先に証言を始めた。田中恵子はそれを聞いて、心が沈み、表情が一層厳しくなった。

杉本瑠璃が中川美鳥に顔を引っ掻かれたと?

桐生誠一は中川美鳥が故意だったかどうか分からないと言っている。

女性が一番大切にしているものは何か?もちろん顔だ。田中恵子は最近お見合いで彼氏ができたばかりで、相手は条件も良く、イケメンだった。しかし彼女は知っていた。この彼氏は実際には彼女が綺麗で、教師という職業だから付き合っているのだと。