第207章 一躍千里(その6)

杉本瑠璃も遠回しな言い方をするのをやめ、はっきりと言った。「伊藤様はご存じないかもしれませんが、あなたのお子様方が私の師匠を誘拐し、師匠を山から下りるよう強要したことについてです。」

何?誘拐!

伊藤様はただ少し驚いただけだったが、伊藤夫人は違った。自分の子供たちが誘拐に関わっていると聞いて、彼女は非常に心配そうな様子だった。

「杉本さん、今おっしゃったことは何ですか?誘拐とは?私の子供たちがあなたの師匠を誘拐したということですか?」

伊藤夫人は焦って、息も上がり気味になった。伊藤様は急いで彼女を落ち着かせ、そして言った。「お前、少し休みなさい。きっと何か誤解があるはずだ。私が杉本さんと話をつけるから、心配しないで。さっき医者も杉本さんも言っていたように、お前の体は十分な休養が必要なんだ。さあ、いい子だから。」

伊藤夫人は心配していたが、夫の言葉を信じていた。長年の風雨を共に乗り越えてきて、彼女は伊藤様の言葉が信頼できることを知っていた。

伊藤様が処理すると言ったのだから、彼女は本当に心配する必要はなかった。

伊藤様は伊藤夫人を落ち着かせた後、杉本瑠璃と別の部屋に移動した。ドアを閉めてから、伊藤様は杉本瑠璃をしばらく観察してから、口を開いた。

「どうやら今日ここに来たのは、酒を飲むためではなかったようだね。玉石や宝石は単なる口実で、本当の目的は誘拐の件だったんだろう。」

伊藤様はほんの少し考えただけで、すべてを理解した。

年の功は伊達ではない、これは杉本瑠璃も認めざるを得なかった。もちろん、彼女も隠し立てはしなかった。物分かりのいい人の前では、率直な方がいい。

「さすが伊藤様の目は確かですね。その通りです。今日私が来た目的は、玉石のことだけではありません。」

伊藤様は杉本瑠璃を横目で見ながら、タバコに火をつけた。指に挟んだまま、吸わずに白い煙が少しずつ立ち上るのを見つめていた。

「話してみろ。どういうことだ。」

杉本瑠璃は伊藤さやか三人の行動を簡潔に説明した。伊藤様はそれを聞いても表情を変えず、まるでこれが大したことではないかのようだった。

「つまり、お前の医術は師匠から受け継いだものということは、師匠が直接治療すれば、成功の可能性はより高いということだな。」