杉本瑠璃は軽く微笑んで、まず言葉を発する前に招待状を差し出した。
伊藤様は疑わしげにそれを受け取り、眉をひそめながら招待状に目を通した。
招待状には、パラダイスの開店場所と時間が記され、伊藤開山を招待する旨が書かれていた。
つまり、杉本瑠璃は来る前から招待状を用意しており、必ずこの招待状を彼の手に渡す機会があると予測していたのだ。
「ふん、なぜ私があなたの宝石店に行くと思っているんだ?毎日私を招待したがる人間は星の数ほどいる。病室に突然入ってきただけで、私が特別に思うとでも?」
伊藤様は招待状を投げ捨て、行く気がないことを態度で示した。
杉本瑠璃は表情を変えることなく、落ち着いた様子で言った。「私の登場の仕方が特別かどうかは重要ではありません。重要なのは、奥様にとってどんな翡翠が最も特別なのか、私が知っているということです。」
言わざるを得ないが、伊藤様の奥様と伊藤様は全く異なるタイプの人間で、どうしてこの二人が結ばれたのか理解できないほどだった。
伊藤様は明らかに短気で残虐な性格の持ち主だが、その奥様は穏やかで、非常に思いやりがある人だった。
伊藤様が奥様を溺愛しすぎているため、奥様は伊藤様に何も要求せず、自分はすでに十分幸せだから、これ以上要求してはいけないと考えていた。
とにかく杉本瑠璃には伊藤夫人の考えを理解することはできなかったが、彼女の考えを知っているだけで十分だった。
「では言ってみろ、どんな翡翠が私の妻の一番欲しいものなのか!」
三島悠羽のアドバイスは確かに効果があった。伊藤様の奥様から攻めることで、やっと伊藤様と話ができるようになったのだ。
「奥様が最も好きなのは、人に選ばせた翡翠ではなく、あなたが直接選んだ翡翠です。たとえそれが最低級の翡翠であっても、奥様は喜ばれるでしょう。なぜなら、それはあなたの心遣いを表しているからです。」
女性というものは、年齢に関係なく、最も重視するのは相手の自分への思いやりなのだ。
伊藤様はそれを聞いて、本当に一瞬固まってしまった。彼は人生の中で常に他人に指示を出すばかりで、振り返ってみると、妻のために直接贈り物を選んだことは一度もなかった。
「ベイビー、彼女の言うことは本当なのか?お前が欲しいのは、私が直接選んだ翡翠なのか?」