三島悠羽が落ち着いた様子で車から降りるのを見て、周りの汚さを全く気にせず、藤原春樹たちを見ても嫌悪感を示さなかった。
正直なところ、杉本瑠璃は困惑していた。
もしかして三島悠羽の潔癖症も、断続的なものなのだろうか?
藤原春樹は以前三島悠羽に会ったことがある。彼女が誘拐された時、三島悠羽も一緒に連れて行かれたのだ。
だから藤原春樹は三島悠羽を見た時、少し気まずそうに、恥ずかしそうにしていた。
藤原春樹は杉本瑠璃と三島悠羽を家の中に案内した。部屋の中は綺麗に片付いていて、明らかに杉本瑠璃が来ることを知って、急いで掃除したようだった。
「恩人、まずはお水をどうぞ」
藤原春樹が二本の水を差し出すと、意外なことに三島悠羽も受け取り、嫌がる様子は見せなかった。
杉本瑠璃は不思議に思ったが、この疑問は帰ってから聞くことにした。
「どう?こちらの件は順調?」
杉本瑠璃は藤原春樹の様々な推測を遮った。彼は杉本瑠璃がなぜ三島悠羽と一緒にいるのか考えていた。
最初の誘拐の時、三島悠羽の身分を知らなかったのならまだしも。後で、彼は三島悠羽が誰なのか知り、その時みんな怖気づいた。
彼らは間接的に三島グループの三島様を誘拐してしまったのだ。今でも生きているのは、本当に運が良かったからだろう。
しかし...原西開発区のような機密事項に、なぜ杉本瑠璃は三島悠羽を連れてきたのだろう?
もしかして...三島グループも参入しようとしているのか?
今は水瀬家が介入しているのに、三島悠羽まで参入するなら、原西開発区は彼らの手に落ちてしまうかもしれない。
しかし、三島悠羽が土地を奪いに来たのなら、杉本瑠璃と一緒にいるはずがない。
これは本当に...理解に苦しむところだ。
杉本瑠璃が藤原春樹の様々な推測を遮ると、藤原春樹は我に返り、答えた。「ほぼ全て集まりました。ただ、もう少し離れた場所はまだ回っていません」
杉本瑠璃が早めに手を打ち、藤原春樹たちも慎重に行動したため、半年以上かけて原西の土地をほぼ買い集めることができた。
杉本瑠璃は頷いた。「残りは一時停止でいい。これ以上遠くなると市外になってしまう。今我々が持っている土地で十分だ。これからは、待つだけでいい」
待つ?
藤原春樹は何を待つのかわからなかったが、杉本瑠璃がそう言うなら、待つしかない。