杉本瑠璃は眉をしかめ、師匠の悩みはかなり深刻なようだと思った。師匠は気ままそうに見えるが、心の中には秘密があり、心配事もあるのだ。
「もしそれが理由なら...あなたも研究所を作ることはできます。ただし、研究所を作るのは、あなたが考えているほど簡単ではありませんよ。」
吉川先生はこの問題についてかなり真剣だった。杉本瑠璃は謙虚に聞いていた。彼女は研究所で一時期試験被験者として働いていただけで、研究所の具体的な運営についてはあまり知らなかった。
今日ここに来たのは、師匠と相談するためだったが、師匠がこんなにも詳しいとは思わなかった。
杉本瑠璃にそのような考えがあることを知ると、吉川先生は多くのことを話してくれた。
杉本瑠璃は謙虚に耳を傾け、聞けば聞くほど驚いた。確かに、知らないことばかりだった。
むしろ、以前は触れることのなかった多くのことを知り、杉本瑠璃は別世界の話を聞いているような気分だった。
研究所のことについて、吉川先生は非常に多くを語った。杉本瑠璃は最初のうちは時々口を挟んでいたが、その後は黙って吉川先生の話を聞き続けた。
「もし本当に研究所を作りたいのなら、私を信用してくれるなら、師匠である私も一人加えてほしい。私もあなたの研究所に加わりたい。」
えっ...
聞き間違いだろうか。師匠が彼女の作る研究所に加わりたいと言うなんて?
なぜかとても不思議な感じがした。これだけ話を聞かされた後、最後の結論は彼女にこの考えを諦めさせることだと思っていた。
諦めさせないまでも、支持はしないだろうと思っていた。
しかし予想外なことに、師匠が自ら彼女の研究所に加わりたいと申し出たのだ。
これは確かに杉本瑠璃の予想外のことだった。
「師匠、なぜ私の作る研究所に加わりたいのですか?先ほどの研究所についての知識から見ると、以前どこかの研究所で働いていたのではないですか?研究所を去って普通の生活に戻ることを選んだのに、なぜまた研究所に加わりたいのですか?」
杉本瑠璃は決して単純な性格ではなかったので、師匠が彼女の研究所設立を手伝いたいという理由だけで自ら加わろうとしているとは思わなかった。
彼女は、師匠には必ず何か意図があるはずだと感じていた。
吉川先生は杉本瑠璃をしばらく見つめ、深く考え込んでから、やっと顔を上げて彼女を見た。