この頃、鈴木てんいちにあの店のことをよく話題にされて、斎藤きくこもちょっと食べたくなっていた。
桐生誠一は食べ物にはあまりこだわりがなかったが、ただ杉本瑠璃とずっと集まっていなかったので、今日はちょうどいい機会だと思った。
みんなはすぐに意気投合し、杉山様のレストランへと向かった。
いや、今は杉本瑠璃のレストランと言うべきだろう。
杉山様は本当に三島悠羽が言ったとおり、数日で帝都に戻ってしまった。
去る前に、杉山様はレストランを杉本瑠璃に譲り、一銭も取らず、ただ時々来て腕を振るうことができればいいと要求しただけだった。
杉本瑠璃は快く同意し、こうしてこのレストランは自然と杉本瑠璃のものとなった。
杉本瑠璃に連れられて、一行はレストランへと向かった。
「竹庭園?この名前はなかなか風情があるね。でも中に竹が一本もないのはなぜだろう?」